東京都品川区の小児科医区議会議員が、小児科外来最前線からみた品川の小児医療、子育て支援について語ります。
 10月24日(火)は伊丹市からさらに神戸市に移動し、午後は神戸市の医療的ケア児と健常児の共生保育の現場を視察するため、NPO法人こどもコミュニティケアが運営する「ちっちゃなこども園ふたば・よつば」を訪問しました。

 この「ちっちゃなこども園ふたば・よつば」は、神戸市垂水区の旧ゴルフ場周辺の新興住宅地の中に「ちっちゃなこども園ふたば」と「ちっちゃなこども園よつば」の2か所に分かれて保育を行っていました。特に、「ちっちゃなこども園よつば」は認可外保育施設「ちっちゃなこども園にじいろ」、障害児通所支援施設「て・あーて」を施設内に併設しており、同時進行で保育が行われていました。



 まずNPO法人こどもコミュニティケア代表理事の末永美紀子さんからお話を伺いました。末永さんは看護師で兵庫県立こども病院を退職した後、医療的ケア児と健常児を共に預かる(共生保育)認可外の保育施設を始めたのだそうです。

 共生保育を始めた理由は、「子どもが子ども社会に参加すること」は子どもの基本的権利だと考えていたので、障害を持っていてもいなくても、当たり前に一緒に過ごせる保育園を作りたかった、とお話されました。病児保育、在宅小児訪問診療に取り組んでいる私にとって、非常に共感できるお話でした。

 その後、行政との係わりなかで、補助金の話もありました。医療的ケアについての加算がないとの話でしたが、在宅医療でも高齢者と小児ではシクテムが全く異なるため、小児在宅医療が広がらない原因もそこにあるのです。この問題はさらに検討しなければならない課題だと思いました。

 病気の子どもを預かる。障害を持つ子どもを預かる。これは働く親の負担軽減のためだけでなく、子どもがより適切な環境で過ごせるために必要な保育です。(いまだに病児保育はいらないなどと高言する、女性無所属議員も品川にはいますが…。)

 障害がある子とない子が同じ部屋で保育されている光景は感動的でした。近い将来、品川区でもこのような保育風景がありふれた世界になるよう、さらに力を尽くさなければならないと、園長先生の話を聞きながら、思いました。

 事業説明の後、市役所の隣接した伊丹市立総合教育センターの施設見学を行いました。



 この施設は5階建てで、1階の展示ルームから、2階は研修室、3階はサイエンスルームで理科実験などもできるのだそうです。4階はカウンセリング相談室や箱庭療法室、遊戯療法室、心理検査室などの部屋があり、5階は先生方が授業の研究をする、授業力向上支援センターとなっていて、コンサルタントが授業に関する相談に乗るのだそうです。



 非常に充実した施設で、伊丹市の教育に関する力の入れ方がよくわかりました。


 ②教職員のスキルアップに関しては、障害者差別解消法第7条の「行政機関等は障害者の権利利益を侵害してはならず、社会的障壁の除去の実施について、必要かつ合理的な配慮をしなければならない」を踏まえ、学校も行政機関として、障害を理由とする差別は禁止、合理定配慮は義務、という強い姿勢で臨んでいるそうです。

 そのために全学校園内における特別支援教育に関する研修や、指導主事、合理的配慮協力員による校園での出前講座などを積極的に実施。

 また、今回の指導課の説明ではあまり触れられませんでしたが、伊丹市では教育のユニバーサルデザイン化を推進しています。

 この教育のユニバーサルデザイン化とは、「できるだけ多くの人が利用可能であるデザイン」を教育に応用し、障害のある、または学びにくさのある子ども達にわかりやすい工夫、参加しやすい配慮などを行うと、クラスの多くの子ども達にもわかりやすく効果的な授業になるそうです。

 伊丹市では「みんなの教室 みんなの授業」という教職員用指導教本が配られ、授業において、このような工夫をされているということでした。

③さらに保護者にも啓発用資料を発行、配布されています。

 これからの伊丹市のインクルーシブ教育システムの構築は、「すべての子どもが、その子の持てる力を、最大限に生かした自立の実現を目指して」進められていくのだそうです。
(この項続く)

 視察第2日目は伊丹市に移動し、伊丹市役所で「伊丹市インクルーシブ教育システムの構築について」、伊丹市教育委員会学校教育部学校指導課の廣重久美子課長と島本浩士指導主事からお話を伺いました。



 伊丹市はかねてからインクルーシブ教育に熱心で、平成16年、伊丹市立特別養護学校内にセンター部門を設置し、巡回相談、研究講座を実施。平成17年、伊丹市立総合教育センターに「特別支援教育推進チーム」を設置。そして、平成19年から特別支援教育を本格的に実施し始めたのだそうです。

 平成21年には、サポートファイル「ステップ★ぐんぐん」を策定し、発達・成長の記録と園校での記録を各機関が共有することにより、乳幼児期から学校卒業後までを一貫して的確な支援を行うようにしました。
 
 そして、平成25年7月に、文部科学省事業「インクルーシブ教育システム構築モデル事業」を受託し、インクルーシブ教育をさらに推し進めているということでした。

 伊丹市のインクルーシブ教育は、①地域の教育資源を活用したシステムの構築、②教職員のスキルアップ、③保護者等への理解、から成り立っています。

 ①とは、伊丹市特別支援学校がコーディネータの役割を担い、幼稚園、こども園、小中学校、高校、児童福祉施設、通級指導教室、総合教育センター、警察などを一塊りとした(スクールクラスターと呼ぶのだそうです)支援体制を作ることで、「ステップ★ぐんぐん」が活用されているのだそうです。



 「ステップ★ぐんぐん」とは、サポートファイルの小冊子で、ここに発達・成長の記録を書きこむページがあり、またサポート(相談・支援)の記録を各関係機関が記録するページもあります。この小冊子を各関係機関が活用することにより、乳幼児期からの記録を見て、一人ひとりのニーズに合わせた支援計画が立てられるということでした。 (この項続く)

 子ども・若者総合相談窓口で来所相談の結果、支援コーディネーターに引き継ぎがされた場合、支援コーディネーターは引きこもり状態にある本人、家族に支援を行う一つの方法として、ピアサポーターを活用しています。



 ピアサポーターとは、引きこもり経験者、または引きこもり支援に関心のある同世代の若者のことで、彼らが引きこもり対象者にかかわることにより、引きこもり本人の心情を把握したり、支援機関への誘導などを親身に行えるなど、より実効性のある支援が行えるということでした。

 ピアサポーター派遣事業は、支援コーディネーターが適切であると考える環境の対象者に対して、対象者、ピアサポーター双方の派遣に対する同意が得られた場合に、行うということでした。現在、ピアサポーターは13人登録されており、平成28年度はのべ56回、引きこもりの自宅や家族会に派遣されたそうです。

 京都市は、現在ピアサポーターの積極的に養成しており、市内のNPOや支援室からの推薦のあった、20~39歳の青年男女を対象に、ピアサポーター養成講座を年4回行っているそうです。

 また、ピアサポーター同士のミーティングや実践的なワークの講習を行い、引きこもりについての講演会の案内もお知らせしているということでした。
 平成26、27、28年度のピアサポーター登録者は大体15人前後で推移していますが、派遣回数は平成26、27、28年度は10回→30回→56回と着実に増加しているようです。

 引きこもりだった人をピアサポーターとして養成し、引きこもりの支援に派遣し、ピアサポーター自身も交流会、ミーティングなどでさらに社会に貢献できるように育成する取り組みは、なかなか実効性があがらない引きこもり支援策としては良いアイディアだと思いました。

 しかし、ピアサポーター自身が仲間で対立したり、ピアサポーターのなかでもよく声がかかる人気のある人とそうでもない人がいたり、途中で脱落する人もいて、ピアサポーターをまとめることも大変だという、支援コーディネーターの方からの苦労話もありました。

 引きこもり対策については、今までもいくつかの自治体の取り組みを視察してきましたが、なかなか成果が上がらず、どこも苦労されているようでした。この京都市のピアサポーター養成と派遣事業に関しては、品川区でも参考になるのではないかと思いました。